「あぁ……はぁ…あ…」 夜、襖一枚の隔たりから聞こえてくる喘ぎ声にいつも耳を塞いでいた。 夕方になると、カーテンを閉めた母親はあたしを押し入れの中に閉じ込める。 まるで、"あたし"なんて最初からなかったんですっていう空間を作りあげるために。 いつも夕方から来る来客を迎えるのに、あたしは必要がないから。