人生2周目 青春リベンジ!!!


――正直、楽しすぎる。

学食のいつもの席。高尾の隣。

「今日、俺が学食奢るわ!」
「えっ、なんで?」
「ムギがかわいいから♡」
「出たー、公認バカップル発言!」
「はいはいごちそうさまでーす」

まわりの友達も完全に“そういう扱い”。

お昼に手をつなぐ。
試験前には高尾が手作りの“お守り”までくれる。

「赤点とっても俺が卒業まで引っ張ってくから!」
「大丈夫!私の方がいつも点数高いからね♡」


そんなわけで、高尾の部屋でお勉強。

ムギはネイルをしている。

「ムギ、臭いって!気が散るー」

「勉強したくない理由をマニキュアのせいにしないで!
私と過ごすなら、今後のためにも、慣れなさい!」

「ムギと過ごすの?ムギと一緒に暮らすの?最高じゃん!」

「はは!高尾と一緒に暮らしたら毎日楽しそう!」

「楽しいよ!ムギが落ち込んでても全力で笑顔にする!!!!ってどんどんプロポーズみたいになってく!」

「ハハハ!」
ムギはマニキュアをかわかす。
ふーっと息をふきかけながら

急に思い出す。


(プロポーズされたときのふみ)

「ずっと一緒にいてください」
花束も指輪もない、地味な部屋。
でも真剣で、不器用で、あったかかった。

(妊娠を報告したとき)

「……ほんと?ほんとに?」
泣きながら笑ってた、ふみくん。

(マナトが生まれたとき)
「ほら、マナト。お父さんだよ」
目を細めて、すごくやさしい顔してた。

(初めて立ったとき)
(初めて「パパ」って言ったとき)

――全部、思い出した。全部。

ポロポロと、涙が勝手にこぼれる。
止まらない。止められない。

高尾が焦ったように言う。

「ムギ……?泣いてくれてるの?もしかして、嬉しくて……?」

でも違う。違うの。そうじゃないの。

(私……もうすぐ、ふみくんに出会うはずだった)

(でも……ふみくんと出会ったのは大学が一緒だったから‥‥。
けど、高尾と同じ大学を選んだ。)

(ってことは、出会わない……?)

(ふみくんと出会わないまま大学生活が終わったら……)

(マナトが、生まれない!?)

「……それ、だめ!!!!」

気づいた瞬間、ムギは立ち上がった。

「ごめんっっ!!!」

――荷物をまとめて
高尾の前から、全力で走り去る。