金曜日。
制服のまま、放課後デート。プリクラ、ゲーセン、ドーナツ
王道すぎて笑えるほどの青春コース。
でも、わたしの心はずっとふわふわしてる。
「なー、ムギー、これ撮ろうぜプリクラ!」
「えー、恥ずかしいって!」
「バカ、カップルの義務だろ!全国共通!」
言いながら、強引に引っ張られる。
プリクラ機の中、昔はぎこちなくピースするだけだったのに、今の私は…
「ほら、こっち向いて〜♡」と、ほっぺに手を当てて、角度を決めるプロ顔。
「……ムギ、なんか、慣れてね?」
「ふふっ、気のせい♡」
(インスタ時代、伊達に生きてないのよ)
⸻
そのあと、ドーナツをシェアしていると、高尾がポロッと言った。
「なあムギ、オレ、将来のことちょっと考えてさ…」
「え?なになに、急に真面目じゃん」
「オレ、ムギと同じ大学行きたい。……勉強、一緒にがんばってみようって思ってる」
胸がキュッとした。
それってつまり、これからの未来を、一緒に歩きたいってこと?
(バカだけど、素直で、ストレートで…)
「うん!じゃあさ、予備校の夏期講習、一緒に申し込んじゃおうよ!」
「おおっ!一緒のとこ行くか!オレ、がんばれる気がする!」
その笑顔を見て、ちょっとだけ未来を想像してしまう。
大学。広いキャンパス。学食で並ぶふたり。
……きっと、あの未来も、そんなふうにして始まったんだ。
⸻
数ヶ月後——
合格発表。
二人で「あった!」「やったー!」って抱き合って、泣いた。
気がつけば、わたしは高尾と同じ大学の入学式の門をくぐっていた。
春の風。桜。キャンパスのにおい。
(あれ……ここまで来ちゃった……)
でも、その時はまだ、わたしは気づいてなかった。
この「楽しい」の向こうにある、もうひとつの「未来」が、
静かに遠ざかっていってることに——



