日が暮れかけた帰り道。
ムギがコンビニの袋を提げて歩いていると、ふいに後ろから声がした。
「ムギ!」
振り返ると、少し息を切らしたふみが走ってくる。
「ふ、ふみくん?なに?」
今回は本当に偶然ふみがいたからムギは驚いた。
「……今、ちょっとだけいい?」
不思議そうに見上げるムギに、ふみは真剣な顔でうなずいた。
「あのさ、この前……ムギ、俺に怒ったじゃん」
「……うん」
「なんで怒ったか、ちゃんと考えた。俺、ムギのこと、ほんとはずっと気になってたのに……自分がどうしたいか、ちゃんと見ようとしてなかった」
ムギの目が、少しだけ揺れる。
「で、答え出た。……俺、ムギとちゃんと向き合いたい」
ムギが言葉に詰まった瞬間、ふみはポケットから小さな紙を出す。
「これ、映画のチケット。今度、二人で行かない?――俺から誘いたかった」
静かな間。
ムギはゆっくり紙を受け取った。
「……ふみくん、変わったね」
「変わりたいって、思った。ムギと話して、ムギに怒られて……やっと、わかったから」
ムギは少しだけ、目を伏せて笑った。
「じゃあ……行こっか、映画。二人で」
その笑顔は、どこか懐かしくて、でも確かに“今のムギ”だった。
ふみは、小さく「ありがとう」と言った。
ただの“偶然の再会”だったはずなのに。
過去が、ゆっくりと動き出した瞬間だった。



