夕方の公園。
風が木々を揺らす音だけが、やけに響いていた。
ベンチに座るムギの隣に、高尾がゆっくりと腰を下ろす。
「……来てくれて、ありがとう」
ムギはうなずくだけで、言葉を返さなかった。
高尾は、ポケットの中でずっといじっていた丸めた紙くずをそっと握りしめる。
「俺さ、ずっと後悔してたんだ。
ムギにちゃんと向き合えなかったこと。
言いたいこと、言えなかったこと……」
ムギの指が、微かに震える。
「でも、今回ちゃんと向き合って、気づいたんだ。
ムギの心の中には……もう、俺じゃない誰かがいるって」
ムギが顔をあげる。何かを言いかけたその瞬間。
「大丈夫。わかってる。
ムギ、ふみのこと……好きなんでしょ?」
その言葉に、ムギは何も言えなかった。
ただ唇を噛んで、視線を逸らす。
「正直、ズルいって思ってたよ。
偶然だとか、友達だからとか、そんな言い訳で、
ムギの“好き”がどこにあるのか、自分でも見えなくしてた」
「でも、俺は……ムギが笑ってくれるなら、それでいいと思ったんだ」
涙が、ぽろりとムギの頬を伝う。
「最後にさ、ちゃんと終わらせたくて、呼んだ」
高尾は立ち上がり、少しだけ笑ってみせた。
「じゃあね、ムギ。
俺の青春に付き合ってくれて、ありがとう」
そう言って、ゆっくり背を向けた。
その背中が、夕焼けに溶けていく――



