バイト終わりの帰り道。
コンビニの袋を片手に、高尾はふと足を止めた。
蒸し暑い夜風。
なんだかやけに、胸の奥がザワザワしていた。
――ムギに時間ある?って聞かれて、
ないって嘘ついた日。
あれから、ずっと後悔してる。
(あのとき、素直に残ってたら、
ムギは……なにを話してくれたんだろう)
思い出すたび、喉の奥が詰まる。
「……もういい。俺も、ちゃんとやる」
コンビニの袋を握る手に力が入る。
(勝てないって、どこかで決めつけてたのは俺だった)
(でも、最後にムギが笑ってくれる未来を、
本気で信じてみても、いいだろ)
深呼吸して、携帯を開いた。
ムギのメールを開いて、
震える親指で文字を打ち込む。
⸻
高尾 ▶ ムギ
「ムギ、会いたい。話したいことがある。
明日、時間くれない?」
⸻
送信。
「……よし」
覚悟を込めたその一通が、
恋の結末を動かす――最後の一手。



