人生2周目 青春リベンジ!!!




「高尾、バイト何時まで? そのあと時間ある?」

ムギの声は、息を切らしながらだった。
追いかけてくれたのがわかって、胸の奥がきゅっとなった。

──でも。

「ごめん、ないわー。また改めて誘う!」

笑って言い切った声は、嘘だった。


「……くそ」

その数分後、バイト先のバックヤードで、高尾はぽつりとつぶやいた。

休憩室の椅子に、ドサッと腰を落とす。

「なんで、あんなこと言ったんだよ……」

ムギの顔が、目の奥に焼きついて離れない。
追いかけてまで声をかけてくれて、
わざわざ時間を作ってまで話そうとしてくれて――

本当は、あのままどこかに行きたかった。
時間なんて、作ろうと思えばいくらでも作れた。

でも、怖かった。

何を言われるか、わからなくて。
ムギがもう、自分のことを過去として話すのかもしれないって思ったら、
それを受け止められる自信がなかった。

「ムギは……俺に会って、どうするつもりだった?」

その答えが知りたくて、でも聞けなくて、逃げた。
あの笑顔の裏に、どんな想いがあったのか。

自分を笑って許しに来たのか、
それとも――もう本当に、終わらせに来たのか。

「くそ……っ」

背中を丸めて、額に手をあてた。
自分が情けなくてたまらなかった。

どこで間違ったんだろう。

あの時、自分の想いをぶつけていれば。

でも、今さらどうやって――


バイト仲間が呼ぶ声に、高尾は顔を上げた。

「高尾、次出番だよ」

「ああ、いく」

返事はしたけれど、心は全然違う場所にいた。

──ムギ。
まだ、ちゃんと話せてないよな。

でも俺、どうやって素直になればいい?