午後の光がやわらかく差し込む、大学近くの小さなカフェ。
席の向かいに座るムギは、抹茶ラテのクリームをスプーンですくっては口に運んでいる。高尾は、その様子をぼんやり眺めていた。
「ねえ、このあとさ、本屋寄っていい? 明日のプレゼン、なんか資料見たくなっちゃって」
「うん、いいよ」
そんな他愛ない会話の合間、ムギがテーブルに置いた携帯の画面がふと明るくなった。
ちらりと視界の端に映った通知。
メールのプレビュー表示が一瞬だけ光る。
ふみくん:そうなんだ!じゃあまた映画いこう👍
その一文が、まるで小さなトゲのように高尾の心に突き刺さる。
(……ふみ?)
(……いつの間に?)
メールを見たムギが顔を上げて、ふにゃりと笑う。
その笑顔が、高尾の胸のどこかをひどく締めつける。
思わず目を逸らしてしまった。
目を逸らしたのは自分の弱さを隠すためだった。
「ね、この前話してた新しい映画さ、来月公開らしいよ!見に行きたいね」
きっと、フミから映画のお誘いが来たから、また4人で行こうとなったのだろう。
高尾は曖昧に笑ってうなずくけれど、心の中では別の音が響いていた。
⸻
高尾・心の声
あいつと……連絡、取ってたんだ……
しかも、映画の話って……なんで俺、知らないままでいたんだろう。
ムギ、あのとき……
ふみと話してたの、あれがきっかけ? それとも、もっと前?
……いや、俺には関係ない……はずなのに。
……なんで、こんなにざわざわするんだよ。
⸻
「それでさ、今度はホラーじゃないって言ってたから、安心して!」
ムギの声が明るく響くけど、高尾の耳には遠くなっていく。
笑ってる。
その笑顔の向こうには、自分じゃない誰かの影が差し込んでいる。
ふみ。
気さくで、まっすぐで、たぶんムギみたいなタイプが好きそうな男。
(……なんで、こんなに見てらんないんだろ)
席の向かいに座るムギは、抹茶ラテのクリームをスプーンですくっては口に運んでいる。高尾は、その様子をぼんやり眺めていた。
「ねえ、このあとさ、本屋寄っていい? 明日のプレゼン、なんか資料見たくなっちゃって」
「うん、いいよ」
そんな他愛ない会話の合間、ムギがテーブルに置いた携帯の画面がふと明るくなった。
ちらりと視界の端に映った通知。
メールのプレビュー表示が一瞬だけ光る。
ふみくん:そうなんだ!じゃあまた映画いこう👍
その一文が、まるで小さなトゲのように高尾の心に突き刺さる。
(……ふみ?)
(……いつの間に?)
メールを見たムギが顔を上げて、ふにゃりと笑う。
その笑顔が、高尾の胸のどこかをひどく締めつける。
思わず目を逸らしてしまった。
目を逸らしたのは自分の弱さを隠すためだった。
「ね、この前話してた新しい映画さ、来月公開らしいよ!見に行きたいね」
きっと、フミから映画のお誘いが来たから、また4人で行こうとなったのだろう。
高尾は曖昧に笑ってうなずくけれど、心の中では別の音が響いていた。
⸻
高尾・心の声
あいつと……連絡、取ってたんだ……
しかも、映画の話って……なんで俺、知らないままでいたんだろう。
ムギ、あのとき……
ふみと話してたの、あれがきっかけ? それとも、もっと前?
……いや、俺には関係ない……はずなのに。
……なんで、こんなにざわざわするんだよ。
⸻
「それでさ、今度はホラーじゃないって言ってたから、安心して!」
ムギの声が明るく響くけど、高尾の耳には遠くなっていく。
笑ってる。
その笑顔の向こうには、自分じゃない誰かの影が差し込んでいる。
ふみ。
気さくで、まっすぐで、たぶんムギみたいなタイプが好きそうな男。
(……なんで、こんなに見てらんないんだろ)



