ムギは何度も何度も高尾にメールをした。
「ねえ、今日バイト一?」「っていうか…ふみくん、いる?」
高尾は「お前、どんだけふみ好きなんだよ笑」と呆れながらも、
「今日も夜シフト一緒だよ。つーか、バイト後一緒に飯行くから、ムギも来る?」
と返してくれた。
(──きた!!)
ムギはガッツポーズを心の中で決めて、電車に乗り込んだ。
大学帰りの時間、わざわざバイト先の近くまで足を運ぶのはもうルーティンと化していた。
そしてその日も、少し早めにバイト先近くのショッピングモールに到着。
「よし、あそこのカフェで時間つぶそ」
──と思ったそのとき。
「……ムギちゃん?」
声をかけてきたのは、まさかの“ふみ”。
(き、き、きたぁぁぁあああああ!!!)
ふみが、コンビニ袋をぶら下げて立っていた。
「あれ、高尾まち??」
「え、あ、ああ……ちょっと早く着いちゃって…高尾が今日ふみくんとバイト後ご飯っていってたから私も混ぜてもらおうかなって!バイト終わる時間一緒じゃないんですね!」
(落ち着け、ムギ。呼吸。自然に)
「そうそう。高尾はあと1時間くらいかな。
じゃあ、ちょっと時間あるしさ、一緒に高尾待とうか」
ふみはそう言って、ムギを近くのベンチに誘った。
ムギは内心、ガッツポーズ三連打。
(オッケーきたー!偶然!自然体!このタイミング!!ありがとう神様!!)
ふみは、袋からクッキーと、コーヒーを取り出して、
「これ、分けようか。ご飯前だけど」と笑った。
(うそでしょ…これ、ラブコメで見たやつ…!)
ムギは、心拍数が上がりすぎて喉を鳴らしそうになりながらも、冷静を装った。
「ふみくん映画好きなの??」
「うん。時間があれば映画見てる!だから、また一緒に行こうね」
(キターーーーーーーーーー!!!!)
──────
「……でさ、あのラストのシーン、俺めっちゃ刺さったんだよね」
ベンチに並んで座って、ふみは映画の話を熱く語っていた。
ムギはうんうんとうなずきながら、(知ってるよ、めっちゃ語ってたもんね、未来で)と心の中で小さく笑う。
「てかさ、あそこ、気づいた?最後に主人公が目線を逸らしたのって──」
「うん。あれって、ほんとは言いたかったんだと思う。『行かないで』って」
ふみの言葉を先回りして、ムギが静かに返す。
ふみは目を見開いた。
「え……まじで?俺、それとまったく同じこと考えてた」
ムギは(でしょーーー!)と心の中で叫びながら、クッキーをつまんで笑う。
──そのとき。
「……あれ、一緒だったんだお前ら」
背後から聞き慣れた声が落ちてきた。
ムギが振り向くと、バイトの制服姿の高尾が、立っていた。
「あ、タカオ〜!遅かったじゃん!」
「ムギ、こっちまできてくれたんだ。」
「うん。家で待ってても暇だったから」
ふみがすっと立ち上がる。
「ムギちゃんとはばったり会ってね」
「そう‥‥」
高尾はふとムギの方を見た。その視線は、どこか少しだけさみしそうだった。
「へー……。なんか、すっげー盛り上がってたみたいじゃん」
「ふみくんが映画の話してたから、つい!」
ムギはそう言ったけど、高尾の表情はどこかひっかかっていた。
「ふーん。そっか。映画の話か。……まあ、そういうの、話せる相手って大事だもんな」
「何それ。ひがんでる?」
「いや?別に?」
高尾は笑ってみせたけど、明らかにその笑みはいつもの調子じゃない。
(……あれ?)
ムギは一瞬だけ、不思議な違和感を覚えた。
さっきまでのふみくんとの盛り上がりのテンションが、急に空気を変えたような気がした。
そして──
「ちょっと、バイトまだあがれそうにないから、それ伝えにきた。戻らなきゃ行けないから、終わったらまた連絡する!」
そう言って、高尾は軽く手を振り、バイト先へ向かっていった。
ムギは、ほんの一瞬、背中を見送って、それからふみくんに笑って言った。
「ねえ、もうちょっとだけ、この話の続きしていい?」
ふみくんは嬉しそうにうなずいた。
──だけど、ムギの心の片隅には、さっきの高尾の“笑顔”が、なぜかずっとひっかかっていた。
「ねえ、今日バイト一?」「っていうか…ふみくん、いる?」
高尾は「お前、どんだけふみ好きなんだよ笑」と呆れながらも、
「今日も夜シフト一緒だよ。つーか、バイト後一緒に飯行くから、ムギも来る?」
と返してくれた。
(──きた!!)
ムギはガッツポーズを心の中で決めて、電車に乗り込んだ。
大学帰りの時間、わざわざバイト先の近くまで足を運ぶのはもうルーティンと化していた。
そしてその日も、少し早めにバイト先近くのショッピングモールに到着。
「よし、あそこのカフェで時間つぶそ」
──と思ったそのとき。
「……ムギちゃん?」
声をかけてきたのは、まさかの“ふみ”。
(き、き、きたぁぁぁあああああ!!!)
ふみが、コンビニ袋をぶら下げて立っていた。
「あれ、高尾まち??」
「え、あ、ああ……ちょっと早く着いちゃって…高尾が今日ふみくんとバイト後ご飯っていってたから私も混ぜてもらおうかなって!バイト終わる時間一緒じゃないんですね!」
(落ち着け、ムギ。呼吸。自然に)
「そうそう。高尾はあと1時間くらいかな。
じゃあ、ちょっと時間あるしさ、一緒に高尾待とうか」
ふみはそう言って、ムギを近くのベンチに誘った。
ムギは内心、ガッツポーズ三連打。
(オッケーきたー!偶然!自然体!このタイミング!!ありがとう神様!!)
ふみは、袋からクッキーと、コーヒーを取り出して、
「これ、分けようか。ご飯前だけど」と笑った。
(うそでしょ…これ、ラブコメで見たやつ…!)
ムギは、心拍数が上がりすぎて喉を鳴らしそうになりながらも、冷静を装った。
「ふみくん映画好きなの??」
「うん。時間があれば映画見てる!だから、また一緒に行こうね」
(キターーーーーーーーーー!!!!)
──────
「……でさ、あのラストのシーン、俺めっちゃ刺さったんだよね」
ベンチに並んで座って、ふみは映画の話を熱く語っていた。
ムギはうんうんとうなずきながら、(知ってるよ、めっちゃ語ってたもんね、未来で)と心の中で小さく笑う。
「てかさ、あそこ、気づいた?最後に主人公が目線を逸らしたのって──」
「うん。あれって、ほんとは言いたかったんだと思う。『行かないで』って」
ふみの言葉を先回りして、ムギが静かに返す。
ふみは目を見開いた。
「え……まじで?俺、それとまったく同じこと考えてた」
ムギは(でしょーーー!)と心の中で叫びながら、クッキーをつまんで笑う。
──そのとき。
「……あれ、一緒だったんだお前ら」
背後から聞き慣れた声が落ちてきた。
ムギが振り向くと、バイトの制服姿の高尾が、立っていた。
「あ、タカオ〜!遅かったじゃん!」
「ムギ、こっちまできてくれたんだ。」
「うん。家で待ってても暇だったから」
ふみがすっと立ち上がる。
「ムギちゃんとはばったり会ってね」
「そう‥‥」
高尾はふとムギの方を見た。その視線は、どこか少しだけさみしそうだった。
「へー……。なんか、すっげー盛り上がってたみたいじゃん」
「ふみくんが映画の話してたから、つい!」
ムギはそう言ったけど、高尾の表情はどこかひっかかっていた。
「ふーん。そっか。映画の話か。……まあ、そういうの、話せる相手って大事だもんな」
「何それ。ひがんでる?」
「いや?別に?」
高尾は笑ってみせたけど、明らかにその笑みはいつもの調子じゃない。
(……あれ?)
ムギは一瞬だけ、不思議な違和感を覚えた。
さっきまでのふみくんとの盛り上がりのテンションが、急に空気を変えたような気がした。
そして──
「ちょっと、バイトまだあがれそうにないから、それ伝えにきた。戻らなきゃ行けないから、終わったらまた連絡する!」
そう言って、高尾は軽く手を振り、バイト先へ向かっていった。
ムギは、ほんの一瞬、背中を見送って、それからふみくんに笑って言った。
「ねえ、もうちょっとだけ、この話の続きしていい?」
ふみくんは嬉しそうにうなずいた。
──だけど、ムギの心の片隅には、さっきの高尾の“笑顔”が、なぜかずっとひっかかっていた。



