「……まだ毒の痕が残っている。肌が熱い」

「それは、あんたが近すぎるからで……!」

「違う。これは俺にしか分からない熱だ。お前の身体が、俺を欲している――そう言ってる」

「なっ……!? 誰がそんなこと――」

 抗議の言葉を遮るように、唇が落ちてくる。

 額、頬、耳たぶ、首筋――
 やわらかく、しかしどこか執拗に。まるで確認するように、雅美の“嘘”の奥を探るように。

「こんなに熱くなるのに……まだ俺から逃げようとするのか?」

「……っ、これは、違う……!」

「違わない。ほら、ここも……」

 彼の手が、ゆっくりと雅美の太ももへ滑っていく。
 布の上からなぞるように、“月印”に触れ――

「嘘をついているなら……罰を与えなきゃな」

 舌を這わせるように囁く声が、耳奥に落ちていく。

「でも――可哀想なお前には、罰じゃなくて、ご褒美をあげようか?」

「っ……や、やめ――!」

「嫌じゃないくせに」

 天焉の唇が雅美の耳を甘く噛んだ瞬間、
 雅美の身体が、無意識に震えた。

(――あぁ、だめ。こんなの、慣れちゃったら……)

「お前が“自分から”求めるまで、俺は毎晩こうして……誘惑してやる」

 赤い瞳が、獣のように笑った。