二、誰にも触れさせたくなかった

 雅美は、思っていたよりも強かった。
 簡単には懐かず、媚びも売らない。
 それがまた、俺を苛立たせた。

「……なんでそんなに反抗する?」

「私は、あなたの“寵妃”になるためにここへ来たんじゃない」

 ――俺の、所有物になれ。

 そう言いたくて、毎夜のように彼女を抱いた。
 ただ快楽を求めるのではない。
 心を、すべて支配したかった。

 ある日、他の妃が雅美に接近した。

「雅美を私の侍女に――」

「許さない」

 笑ってそう言った俺に、重臣たちは引きつっていた。
 だが、本気だった。
 雅美に触れようとするものすべてを――消してやると、心から思っていた。