これは、帝・天焉が雅美に初めて出会い、
彼女を“偽りの神子”と知りながらも、
それでもどうしても手放せなかった、
――狂気と執着に満ちた溺愛の日々。



一、最初に見つけた夜

 雅美を初めて見たのは、雨の夜だった。
 捨てられた孤児のように震え、
 それでも誰にも頼らず、静かに、誇り高く立っていた。

「……美しいと思った」

 最初の感想はそれだけだった。
 でも、見つめ合ったその瞬間、何かが壊れた。

 他の妃など目に入らない。
 どんな由緒も、美貌も、政治的価値も――どうでもいい。

(こいつがいれば、それでいい)

 ただの小間使いにすぎない女を、
 帝であるこの俺が、強引に側仕えにし、抱くようになるまで――たいして時間はかからなかった。