一、最後の敵

 天焉の禁呪により、雅美の“神の加護”は彼に吸収された。
 だが、その術式の余波で、後宮に封印されていた“神喰の一族”が覚醒する。

「雅美様……あなたは、我らが“偽神”であることを証明するために生かされていた」

 そう語ったのは、神官・暁真。

「お前……まさか……」

「そうです。私は“神喰の末裔”。天焉様が禁呪を使ったことで、“神の守り”は消えた。
 今なら、お前たち偽りの神子と帝――両方を消せる」

 天焉はすぐさま雅美を庇い、禁呪によって得た力を振るう。
 しかし、彼の命はすでに限界だった。

「雅美……逃げろ……」

「イヤッ……私を置いていかないで……っ!」

 その時、雅美の内から新たな光が生まれた。
 それは、天焉と繋がった“血の契り”によって呼び起こされた、雅美自身の真なる力――

 雅美は、神喰の攻撃をその身で受け止め、自らの意思で“神の祝福”を起動させた。

「私はもう、誰の傀儡でもない。
 天焉様と共に、ここに生きる“ただの女”として、あなたたちを……拒絶する!」

 神の光と、禁呪の闇がぶつかり合い――
 全てが、白い閃光の中に消えた。