四、紅椿の夜に

 禁呪の反動で、天焉は高熱に倒れた。
 だがその夜、雅美は一睡もせず、寝台の傍らで彼の手を握っていた。

「バカ……本当にバカよ。私のために、そんな術……」

 微かに動いた天焉の指が、彼女の手を握り返す。

「……俺のものに……なれたか……?」

「……なったよ。もう、とっくに……あんたのものだよ」

 涙を零しながら、雅美はその額にキスを落とした。

「だからもう、命を懸けるような愛し方……やめてよ」

「無理だな。俺は、ずっと……お前を壊すほど愛してるから」