二、帝の独占と嵐

 その夜。
 雅美が天焉の寝所へ戻ると、彼の機嫌は明らかに悪かった。

「お前、今日……誰と会っていた?」

「……!」

「誰だ。言え」

「ただの庭番の一人です。少し話をしただけ」

「“ただの”なら、なぜ言葉に詰まる?」

 バン、と寝台の柱を叩く音が響いた。

 天焉の瞳は真紅に染まり、獣のように光っていた。

「俺以外の男と話すことを、“ただ”とは呼ばない」

「そんなの、あなたの独りよがりでしょ!」

「そうだよ。俺は最初からずっと、独りよがりだ」

 そのまま雅美を引き倒し、組み敷いた。