檻の外で咲く恋

芹羽「……うん」

言われるままに、そこに座る。

カップに注がれたコーヒーの匂い。

焼けたパンの香り。

全部、普通のはずなのに。

隣にいる存在だけが、
どうしても“普通”に思えなかった。

一颯「芹羽」

名前を呼ばれる。

一瞬だけ、体が固まる。

一颯「砂糖、いる?」

ただ、それだけの言葉。

なのに。

心臓が、少しだけ強く鳴った。

芹羽「……いらない」

そう答える声が、
自分でもわかるくらい、ほんの少しだけ震えていた。