檻の外で咲く恋

リビングに向かう。

ドアを開けた瞬間、
楽しそうな声が耳に入る。

一颯「おはよう、芹羽」

先に気づいたのは、一颯だった。

いつもと変わらない笑顔。

まるで、何もなかったみたいに。

芹羽「……おはよう」

自然に返したつもりの声が、
少しだけ硬い。

潤羽はそれに気づいていないのか、
普通にパンをかじっている。

ママも、変わらず楽しそうに話している。

――誰も、知らない。

この家の中で、
何かが少しだけ変わってしまったことを。

一颯「ほら、座れば?」

一颯が軽く椅子を引く。

その距離が、昨日より近い気がした。

断る理由は、やっぱり見つからない。