檻の外で咲く恋

胸の奥に残る、あの感覚。

言葉にできないまま、
それだけが、静かに残っていた。

その夜は、何も起きなかった。

新しい家のリビングで、
ママと柾斗さんの笑い声が響いている。

一颯さんの声も混ざって、
どこにでもある「家族の音」になっていた。

ママ「芹羽、これ運ぶの手伝ってくれる?」

ママに呼ばれて、キッチンへ向かう。

――ただ、それだけ。
それだけのはずなのに。

背中に、視線を感じた。

振り返る勇気はなかった

気のせいだと、自分に言い聞かせる。

そのまま、やり過ごす。

それから数日。

学校と家の往復。 変わらない日常。

潤羽も、ママも、楽しそうで。
この家は、ちゃんと「普通」になっていく。