北条くんは何度もわたしの気持ちを聞きたがった。

何度口にしても慣れないわたしと、何度聞いても嬉しそうに笑う北条くん。

先に白旗を上げたのはわたしだった。


頭から蒸気が出そうなほど茹だっていて、北条くんが空調を調節してくれる。

全身の力を抜いてソファにもたれていると、北条くんも隣にきちんと座り直した。


一度は離れた手を、しっかりと繋ぎ直される。


「僕が言いづらくさせてしまっていたなら、ごめんな」
「ううん、伝えるつもりは、なかったから」
「そっか」


もう隠し事は何もない。

結果的に告白してしまったけれど、本当は伝えるつもりはなかったことを言うと、北条くんはそっと目を伏せた。


「好きってすごいね」


文字が目に見えるとしたら、今わたしたちの足元にはそれがたくさん転がっている。

どれだけ伝えても、まるで伝わっていないような気持ちになる。

とめどなく、溢れてくる。


「隠していようなんて、たぶん無理だった」


この気持ちをなかったことにして北条くんと一緒にいることも、この気持ちを抱えたまま北条くんと離れることも。

たぶん、どちらも無理だったと思う。

遅かれ早かれ、わたしは北条くんに会いに来ていた。


そう伝えると、北条くんは顔を赤く染めて、それから両手で頭を抱える。


「……吹っ切れた三瀬さん、こわい」
「何か言った?」


北条くんが小声でぽそっと呟いたことが拾えなくて、聞き返すけれど教えてくれない。

形勢逆転、と北条くんの顔を覗き込むと、更に赤くなって顔を背けられた。

それでも、手は繋いだままなのがおかしくて、笑ってしまう。