手と頬を伝っていく涙はとめどなく溢れて、呼吸も上手くできない。

うわ言のように無意識に『北条くん』と『好き』が口から零れていくと、間髪入れずに手首をぐっと掴まれた。


「っ、や……」
「三瀬さん」


強い力で引っ張られて、顔を覆っていた手が離れる。

涙でぼやけた視界でも、北条くんの顔だけは鮮明に見える。


北条くんも泣き出す前みたいに顔をくしゃっと歪めていて、わたしの気持ちが、告白が、そうさせたのだと思うとずきっと胸が痛む。

でも、たぶん、そうじゃない。

だって、北条くんは泣きそうな顔で、笑っていた。


「ほんとうに? 三瀬さん、僕のことが好き?」
「……うん」
「好き?」


両手は北条くんに握られて、逃げ場はない。

ぽろぽろ涙は零れるし、顔は熱くてたまらない。


頷いても離してもらえなくて、もう一度同じことを尋ねられる。

観念して、恥ずかしさを堪えて、小さな声で伝える。


「……好き」


ぱちっと目が合うと、北条くんは嬉しそうに笑った。


ほんの少し、期待していなかったといえば嘘になる。

北条くんは、同じ言葉を返してはくれなかった。

でも、重ねた手は、同じ気持ちだと伝えてくれている気がした。