カウンセリングの内容は、毎回他愛もない話。

何か悩みや考え事があるというよりは、この時間で自分の心の中を整理して、一息つくことが目的だった。

カウンセリングの先生にもさっき北条くんと話しているところを見られたから、友だちなの? と聞かれた。

小学生のころから知ってる、今同じクラスって話をしたら、北条くんの話題はそれで終わった。


「先生と話していると、気に止めなくてついつい見過ごしちゃうけど心のどこかで引っかかってること、ちゃんと解いて流せるみたいな、そんな感じなんだ」
「うん、言いたいことわかるよ。三瀬さんは、伝えるのも上手だよね。自分の気持ちを言葉にして、整理して、受け止めるってすごく大変で難しいことなんだよ」


カウンセリングって、そういう目的で使っていいのかな? って。

普通は、悩んでいることや困っていることが解決したら、卒業するものなんじゃないのかな? って。

そんな風に思ったこともあるけれど、それをそのまま先生に伝えたら、全然いいんだよって言ってくれて、この半年間は甘えている。

カウンセリングの間隔をもう少し開けたらどうかな? って提案をされたことがあって、やっぱり本来想定されている使い方とは違うんだろうなとは感じていて、いつまでこの時間が続くかはわからない。


「学年が変わって変化も多い時期だしね」
「悩み……とは違うけど、去年仲がよかった子は皆クラスが離れちゃって。今年一緒になった子で、小学生のときからの友だちがいるんだけど、その子は他にも友だちがたくさんいて、なんかちょっと、寂しいなー、なんて」


最後の方は少しだけ茶化してみたけれど、実際のところ、なかなかクラスメイトとの距離が縮まらないことで悩んでいた。

ほんの小さな悩みで、距離が縮まらないといっても休み時間に話したりすることはあるし、ペアやグループ活動で組めずに困るなんてことはない。

ただ、いつもここ、いつもこの人たちって居場所が今まであったのになくなってしまって、足元が柔らかく落ち着かない感じ。


「これからだよ、きっと。三瀬さんのペースでいこう」


何かアドバイスが欲しかったのに、時間が迫っていることもあるからか、先生はあっさりと流してしまう。

親身に話を聞いてくれて、物言いも柔らかくいい人だとは思うけれど、こういうときは、一線引かれた気持ちになる。


次回の予約は、1ヶ月になった。

どうして? とは聞けずに、お礼を伝えて保健室側のドアを開ける。