ぽたっとシーツに丸い染みができて、あれ? と思う間にもぽつぽつと数を増やしていく。


「っ、なんで……」


どうして、自分が泣いているのかわからない。

さっきまで北条くんが大変なことになったと思っていたから、ほっとして緊張の糸が緩んだのだろうか。

それにしたって、不自然に流れ落ちていく涙。

拭っても、拭っても止まらなくて、その内に北条くんを起こしてしまう気がして、繋いだ手を離してカーテンの外に出ようとしたとき。


「……みつせさん」


北条くんが薄らと目を開けて、黒目が少しさまよった後にわたしを見つける。

目が合う前に、ぱっと顔を背けた。

三瀬さん、ともう一度、掠れた声で呼ばれて、わたしはカーテンの方に顔を向けたまま、動きを止めた。


「ごめんね、おどろかせたね」
「……こんなときまで、わたしのことじゃなくていいよ」
「三瀬さんがいやになったのは、こういうところ?」
「っ、いやになんて……!」


なっていない、と慌てて振り向いたら、北条くんは悲しそうに笑っていて、そんな顔を初めて見たわたしは息を飲む。


「三瀬さんの、気持ちを知りたい。僕のことが嫌になったなら、そう言っていい。何も知らないまま、離れるのは嫌だよ」


体を起こそうとする北条くんを止めて、椅子に座る。

まだ涙は止まらなくて、ぐすぐすと鼻を鳴らしていると、膝に置いた手を北条くんの手がそっとさすってくれた。