「北条くん……? 北条くん!」


肩に倒れ込んできた北条くんは、顔を歪めて小さく呻く。

片手で北条くんを支えて、通りがかった他学年の生徒に立川先生を呼んでもらうように伝える。


「北条くん、三瀬さん」


立川先生は保健室に戻っていたようで、すぐに駆けつけてくれた。

職員室にいた先生も数人出てきて、北条くんは保健室に運ばれて行った。

わたしもその後を追って保健室に行ったけれど、立川先生に一先ずは相談室で待っているように言われる。


北条くんの荷物が置いてあるソファに座って、震える手をぎゅっと握る。

背中には冷たい汗が伝って、動揺が収まらない。


どれくらい、そうしていただろう。

保健室から聞こえていた声が聞こえなくなって、しばらくすると部屋のドアをノックされた。

返事をすると、立川先生が入ってくる。


「立川先生、北条くんは?」
「大丈夫。意識はあるよ」
「病院には……」
「親御さんに連絡したら、この後迎えに来るお姉さんに引き渡していいって。今は眠っているから、三瀬さんも保健室においで」


すぐにでも病院に行くような事態だと勝手に想像していたから、立川先生の落ち着いた様に戸惑いながら、保健室の方に行くと、ベッドのカーテンが一箇所閉まっていた。

立川先生のそばにいようと思ったけれど、ちょうど部活で怪我をした生徒が入ってくる。

目で合図されて、わたしは北条くんのいるベッドのカーテンを少しだけ開けて中に入る。


「……北条くん」


小さく寝息を立てる北条くんは、先程の辛そうな表情はなく、穏やかな顔をしていた。

薄い布団の上に置かれた手にそっと触れる。

冷たい手にぬくもりを分けるように、優しく、そっと握る。