だからこそ、やっぱり、わたしの気持ちは余計なものだと思う。
「北条くん……わたしね」
心の準備をする時間がほしかった。
北条くんといたい、この時間を大切にしたい。
朱那の言うように、自分の気持ちも、大切にしたい。
「しばらく、ここには来ない」
北条くんといると浮ついて、今もほら、北条くんの笑顔を見るだけで、伝えたいって、好きだって、溢れそうになる。
「いやだ」
ちゃんと伝えなきゃだめだって思ったから、目が潤むのも構わずに北条くんの目を見て伝えたのに。
北条くんの手が伸びてくるのがわかって、背中に両手を隠す。
そこまでしたら追いかけてこないと思ったのに、北条くんはわたしの背中に手を回してまで、わたしの手を取った。
焦ったように捕まえたから、指先はちぐはぐに絡まる。
手のひらから指先まで、触れない場所がないくらいにぎゅっと握りしめられて、痛いくらいだった。
「僕、何かした?」
「ちがう、北条くんは何も、変わらなくて」
「それなら、三瀬さんは変わったの?」
そうだよ、変わったのはわたし。
この時間が何より大切だったのに、わたしが、わたしだけが変わってしまった。



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