繋いだ手、結んだ指先で。



「そんなのじゃないよ」


俯いて、ぽつりと呟くと朱那は戸惑うことなく、どうして? と返した。


「……好きになっちゃいけないと、思う」
「だけど、そういう風に思うってことは、結衣はきっと」
「わかってるよ」


支離滅裂なことを言っている自覚はある。

結局のところ、わたしは自分の気持ちを理解していて。

でもそれは、決して北条くんに伝わってはいけない気持ち。


「北条くんに伝えないの?」
「言えないよ」


その理由を、朱那には話せない。

唇を引き結んで、ふるりと首を横に振る。


「私は、結衣が我慢することなんてないと思う」


朱那はきっぱりと言って、それからわたしの肩を抱き寄せた。

ぎゅうぎゅうと苦しいくらいに抱きしめられて、戸惑いながら朱那の顔を見ると、ぱちりと目が合う。


「もし、伝えたくなったらそのときはちゃんと言うんだよ。大丈夫。好きなこと、苦しいかもしれないけど、結衣のその気持ちは大切にしていいからね」


朱那がわたしの話を、北条くんのことを、どういう風に捉えたのかはわからない。

でもこの気持ちの在り処はここで、わたしの心の中で、いいんだって言われた気がして。

朱那の肩に顔を埋めて、込み上げそうになる涙を飲み込んだ。