繋いだ手、結んだ指先で。



「北条くんに会っていたの」
「北条って……あの北条くん?」
「うん、そう。たまに学校に来ていて、この間は外で会ってた」


中学生になってから、朱那は一度も北条くんを見ていない。

驚くのも当然だと思う。


「結衣と北条くんって、そんなに仲良かったっけ」
「ちゃんと話したのはこの春からかな」
「それじゃあ、金曜日にどこかに行ってるのはもしかして」
「北条くんが来てるから、放課後に少しだけ話してるんだ」


話しながら、ずっと緊張で心臓がドキドキしてる。

朱那は真剣に話を聞いてくれていた。


北条くんが教室に来たがらない理由は避けて、この数ヶ月のことを伝えると、朱那は何故か嬉しそうににこにこと笑っている。


「そっかあ。うん、でも納得した。最近の結衣、雰囲気が変わったから」
「雰囲気……?」
「うーん、どう言えばいいのかな。好きな人がいるみたいな感じ? 明るくなったというか」


朱那の例え話に、ぴたっと息が詰まる。

朱那は気付かずに、ここもいつもと違うよね、と話を続けているけれど、わたしはさっきの一言で時が止まったような心地でいて。


どうして、気付いてしまうのだろう。

わたしが自覚して、でも駄目だって隠そうとしている気持ちは、朱那の目にも明らかなくらい、表に出ているのかな。

もし、滲み出ているのだとしたら、北条くんにも伝わってしまうほどのものだとしたら。

わたしはもう、北条くんには会わない方がいいのかもしれない。


そんな気持ちがぶくぶくと湧いてきて、ぱちぱちと痛みを伴って弾ける。