繋いだ手、結んだ指先で。



椅子を引いて、自分の席に突っ伏す。

胸の内がざわざわとして、落ち着かない。


「結衣」


とんっと背中に手を当てて、そのまま摩ってくれるあたたかい手。

腕の隙間から目だけを覗かせると、明らかに心配ですって顔をした朱那がいた。


「もう少しここにいる? 帰る?」
「……帰る」


まだ教室には数人、人が残っているから。

早くこの場所じゃないところに行きたかった。


朱那と一緒に学校を出て、帰り道を歩く。

朱那は何も聞かず、何も言わずにいてくれて、分かれ道の手前で足を止める。


「このまま帰った方がいいなら、そうしよう。でももし、話してくれることがあるなら、寄り道しよっか」


どうする? とわたしに決めていいって言ってくれる朱那に、小さく頷く。

昔よく遊んでいた公園のベンチに座ると、朱那は鞄の中から巾着袋を取り出した。


「じゃーん、お菓子!」
「朱那、いつもお菓子持ってるよね」
「お腹空いたときにこっそり食べるようにね。あ、授業中は食べないよ。部活のときとか」
「でも、前に授業の前にチョコの匂いがしてたよ」


小さな飴やチョコ、ラムネといった音の出ないお菓子を選んでいる辺り、確信犯だ。

バレた? と朱那は笑って、いくつかお菓子を分けてくれた。

それを食べながら、朱那の方から話してくれる。


「私も実は気になってたんだ。金曜日、何かあるんでしょ? 帰らないで残ってるし、いつも楽しそうにしてる」
「わたし、そんなにわかりやすい?」
「それもあるけど、気付いちゃうんだよね。結衣が大切な友だちだから」
「朱那」
「大丈夫だよ」


大丈夫を伝えるみたいに手をぎゅっと握ってくれる。

だから、その言葉を、朱那を信じて、話し始めた。