繋いだ手、結んだ指先で。



「違う学校の人だよ。昔の友だち。この間は久しぶりに会ってたの」
「そうなんだ。何か、三瀬さんが男の子と会ってるって意外だったから。色々聞いちゃってごめんね」
「ううん、大丈夫……」


納得しきっていない顔に見えるのは、気のせいだろうか。

相手が誰かが気になるというよりは、わたしが学校の外で知らない男の子と会っていたことの方が気になっているような物言い。

山岸さんはそれで話を終わらせようとしたのに、今までずっと黙っていた笹野さんが、一歩前に出てくる。


「……三瀬さん、泣いてた、よね」
「えっ! そうなの?」


戸惑い混じりに言った笹野さんに、即座に反応したのは山岸さんだ。

ねえっ、と急に肩を掴まれて、びくっと後退る。


「本当に、友だちなんだよね? 何かトラブルとか……」
「本当に友だちだから!」
「彼氏、じゃないの?」


わたしが大きな声を出すと、山岸さんは驚いてすぐに手を離してくれた。

そのまま、探るように小声で尋ねられる。


あの日の涙を、誰かに何か言われたくなんてない。

山岸さんと笹野さんが単純な好奇心で聞いているわけではなくて、特別仲が良いわけでもないわたしを心配して、気遣って言ってくれていることはわかる。

でももう、何も答えたくないし、何も言いたくなかった。


「ごめん、言いたくない」


首を横に振って言うと、最初に言いたくなかったら言わなくていいと話してくれていたこともあり、すぐに身を引いてくれた。


「何かあったら、言ってくれていいからね」


山岸さんは真剣な顔でそれだけ言うと、笹野さんたちを連れて教室を出ていった。

周りで静観していたクラスメイトも、ざわつきながら散り散りになっていく。