繋いだ手、結んだ指先で。



ここで返事に詰まっていたら変に思われてしまう。

小さく頷くと、山岸さんは続けて言う。


「一緒にいた人って誰?」


予想していた質問に、驚きはしなかった。

でもすぐには答えを用意できなくて、さっと背筋が冷たくなる。


「言いたくなかったらいいんだけど……学校で見たことがない人だったって。それで気になって、ね」


山岸さん本人が見たわけではなく、隣にいる笹野さんが土曜日、同じ公園にいてわたしたちを見かけたらしい。


いつの間にか、教室の中はしんと静かになっていた。

人は疎らに残っているのに、わたしと山岸さんの会話が聞こえたからか、周りの人たちがこちらを窺い見ているのを感じる。


嘘はつきたくない。

でも、一緒にいたのは北条くんだと教えることもできなかった。

笹野さんは小学校が違ったから、北条くんのことを見たことがなくて、本当にただの知らない人に映ったのだろう。

たとえば、その場にいたのが朱那だったら、あれは北条くんだと気付いたかもしれない。


「三瀬さん?」


気遣わしげに聞くのなら、やっぱりこの話はやめようって山岸さんから切り上げてくれたらいいのに、そこまで親切にはしてくれない。


この教室にいる大半の人は、北条くんを知らない。

人の目が怖いと言っていた。

奇異の目、同情心、先入観、勝手なイメージ。

それを重ねるようなことはしたくない。