どうせ全部読まれてしまうのなら、とせめて北条くんから距離を取って手紙を読み終わるのを待つ。
ベンチの端に、北条くんに背を向けて座っていると、かさっと紙をたたむような音が聞こえた。
「三瀬さん、プレゼント、手紙もありがとう」
「……うん」
「こっち向いてくれないの?」
そう言われて、素直に北条くんの方を向くことはできない。
手紙の内容は、何も見られて困るようなことを書いたわけではない。
でも、目の前で読まれるとなると話が違う。
「僕も、三瀬さんのことをもっと知りたい」
「言わないでってば」
「うん、でも、嬉しくて」
声だけでも、弾んでいて嬉しそうなことが分かる。
きっと、その顔も笑顔なのだろうと思うと、自分の恥ずかしさよりも、北条くんの顔が見たいという気持ちの方が大きくなる。
ゆっくりと振り向くと、北条くんはいつものように、いつも以上に、和らいだ表情で、笑っていて。
ああ、わたし。
北条くんのことが好きだな。
「あ……」
口にはしていないのに、気を抜くとぽろっと溢れてしまいそうで、自分の口元をそっと押さえる。
「三瀬さん?」
「わ、わたし、飲み物買ってくる!」
こういうとき、北条くんが取る行動はもうわかっている。
きっと、顔をじっと見られてしまうと思ったから、その前に立ち上がってその場を離れた。



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