繋いだ手、結んだ指先で。



膝に置いた鞄の中に、ある物が入っている。

わたしが知っている、数少ない北条くんの情報から、これ以上が出てこなくて選んだプレゼント。

本当は、もっと北条くんを知って、選びたかった。

それでも、あながち外してはいないんじゃないかと信じて、ラッピング袋に包まれたそれを取り出す。


「北条くん、お誕生日おめでとう」
「え……」


両手サイズの小さな箱を差し出すと、北条くんはぱちりと目を瞬く。

ぽかんと呆けていたけれど、はっとして受け取ってくれた。


「あ、ありがとう。でも、これ一体いつ……」
「今朝、探しに行ったの。約束が午後でよかった」
「朝から選びに行ってくれたんだ? ごめん、伝えるのも急だったのに。でも、嬉しい、本当に。開けていい?」
「もちろん。気に入ってもらえるかはわからないけど」


目の前でプレゼントを開けるのって、こんなにドキドキするものだったかな。

ラッピングを解く北条くんの指先を見つめていると、中身が現れるまでの時間がすごく長く感じる。


「これは……ハーバリウム?」
「う、うん。あの……今日の行き先がここだったし、あとお花が好きってことは前にちょっとだけ聞いてたから」
「この色は?  もしかして」
「水色が好きって言ってたから……ねえ、分かって聞いてるでしょう」


嬉しそうというよりはからかうような意地悪な笑みに変わっていて、もう北条くんの方を見ていられない。

ぱっと顔を背けると、北条くんは何も言わなくなって、そのあとに続く沈黙があまりにも長いから気になってちらりと横目に見てみる。


「わー! 待って待って」
「え、いや、まだ途中だから」


北条くんがじっと読んでいたのは、わたしが一緒に入れた手紙だった。

まさか今、目の前で読んでいるとは思わなくて、とっさに手を伸ばして取り返そうとするけれど、北条くんはさらりと避けて渡してくれない。