繋いだ手、結んだ指先で。



「理真の友だち?」
「あ、はい、友だちで……三瀬結衣といいます」
「あなたが結衣ちゃんか」


いきなり名前で呼ばれて戸惑うし、お姉さんはわたしの名前を聞いて何か心当たりがある様子だった。

北条くんから話を聞いていたのかもしれない。


「姉ちゃん、どうした? ここまで来るなんて」
「どうしたじゃなくて、いつもより早いんじゃなかったの? 待ってたのに来ないし連絡がつかないから何かあったのかと思って見に来たのよ」
「いや、早いのは昨日だけだよ。今日はいつもと変わらないって送ったはずだけど」
「えっ、じゃあお姉ちゃんの勘違いかも。ごめん、邪魔しちゃった?」


北条くんとお姉さんの会話の中で、昨日という言葉が聞こえた。

昨日も学校に来ていたのかな、知らなかったなと、少しだけ寂しい気持ちになっていると、いつの間にかお姉さんがじいっとわたしを見ていた。

この姉弟、人のことを覗き込む癖でもあるのだろうか。


「小学生の頃と変わらないね」
「え?」
「あ、可愛いって意味でね」


そういうつもりで聞き返したわけではないのだけれど、どういうことだろうと北条くんの方を見る。

北条くんは何故かむっとした顔をして、お姉さんのことをぐいっと外に押し出す。


「三瀬さん、また明日」
「えっ! なになに、また明日って。デート?」
「うるさい、姉ちゃん早く行って」


北条くんも荷物を持って一緒に出ていくから、今日はこのまま帰ってしまうのだと思う。

興味津々といった様子のお姉さんを軽くあしらいながら、北条くんはこちらを振り向かずに行ってしまう。

聞くはずだった連絡先は聞けないままになってしまった。