週に一度、放課後の30分程の時間を北条くんと過ごすことにも慣れたころ。

翌週から6月に入るという時期に、頭痛に悩まされていた。

梅雨が近いからというよりは、季節の変わり目には偏頭痛が起きやすい。

よく知った感覚とはいえ、慣れるものではなくて、頭だけじゃなくて体も重く感じる。


この日は特に気分が優れなくて、午後の授業が始まる前に保健室を訪ねた。

立川先生は簡単に症状を聞いて、そういえば体質的なものだったねと納得すると、すぐにベッドを空けてくれた。

眠れそうなら寝ていいよ、と言われて、本当に眠ってしまっていたらしい。


目が覚めると、頭痛は少しだけ良くなっていて、ベッドの傍らには椅子に座ってすうすうと寝息を立てる北条くんがいた。


「……なんで?」


どうして北条くんがカーテンの内側にいるのか、布団に頭を突っ伏して眠っているのか、寝起きの頭では理解ができない。

ひとまず、夢ではないことを確かめて、北条くんの肩をそっと揺らす。


「起きて、北条くん」
「う、ん……おはよう、三瀬さん。あれ、ほっぺが赤いよ」
「さっき、つねったから」
「なんで?」


なんで? とはまずわたしが聞きたい。

夢かどうか確かめようとしてつねった頬はじんじんと痛むし、うーんと伸びをする北条くんの呑気な姿に呆れてしまう。


「頭痛いって聞いた。もう平気?」
「うん、もう大丈夫だよ。よくあるの、偏頭痛」
「偏頭痛か。僕の姉ちゃんもあるよ。梅雨時期は特にきついって」


平気だと言っているのに神妙な面持ちでじいっと顔を覗き込もうとするから、布団を持ち上げて顔を隠す。

北条くんがここにいる理由は金曜日の午後だからだけれど、このスペースにまで入り込むのは絶対に普通じゃない。

前から思っていたことだ。

北条くんは、人との距離感が少しだけ、近い。