北条くんを見ると、耳がほんのりと色付いていて、つられて赤面してしまう。

泣いたり、嬉しくなったり、照れたり、忙しくて仕方がない。

気付けば20分も経っていて、ふと気になっていたことを聞く。


「北条くんは、今日もお迎え?」
「うん、このあと姉が来てくれる。あと10分くらいかな」
「お姉さんがいるんだ」
「姉と兄がいるよ」


初めて知ることばかりで、いくつ歳が離れているとか北条くんに似ているかとか、質問を繰り返していたらあっという間に時間が過ぎてしまう。


「三瀬さん、また来週会おう」


帰り支度をした北条くんがそう言ってくれるけれど、何だか離れがたくて返事ができずに、北条くんを見つめる。


「……そんな顔しないの」


北条くんは困ったように笑って、軽く丸めた拳でわたしの額をこんっと小突いた。

“そんな顔”と言われて自分の頬にぺたりと手を当ててみるけれど、どんな顔なのか、全然わからない。


「北条くん……?」


手の甲をわたしの額にぶつけたまま、北条くんはじっとわたしを見ていた。

少しだけ、高さの合わない目線。

華奢に見えるけれど、女子のわたしよりは肩幅は広いし身体も厚い。


ふと、この距離感はいけない気がして、片足を後ろに引くと、北条くんもハッとして手を下ろした。