中学2年生に進級した春。

クラス表を端から確認していって、最後のクラスに自分の名前を見つけた。

そして【三瀬 結衣】という自分の名前の上にもう一人、よく知った人の名前を見つけて、あっと声を上げる。


「北条理真くん」


北条くんとは、小学校から数えて8回目の同じクラス。

北条の【ほ】と三瀬の【み】の間の文字が頭文字につく人がいたら、名前が上下に並ばない年もあったけれど、クラスが離れたことは一度もない。

これだけ長く続いたら、離れてしまうのは何だか寂しくて、仲のいい友だちと同じクラスになれたかとか、担任の先生はどんな人かとかよりも、真っ先に北条くんの名前を探してしまう。


北条くんも、わたしの名前がまた近くにあることに気付いてくれるといいな。


いつの間にか後ろに列ができていることに気付いて、新しい教室に向かう。

教室にはまだ誰も来ていなくて、座席表を確認して座った席は廊下側から二列目の真ん中。

壁の掲示物も生徒の物もまだ何もないまっさらな教室。

これからの1年間で、この教室はどんな風に変わっていくのかな。


「……北条くんも、一緒がいいね」


誰もいない教室にこぼした、わたしのひとりごと。


北条くん、北条理真くん。

わたしと同じ中学2年生。

ずっと同じクラスなのに、顔を合わせたことは数回しかないし、話したこともほとんどない。


最後に会話をしたのは、小学校の卒業式。

式の終わりに『中学でもよろしく』と言葉を交わしたきり、北条くんとは会っていない。