「…それでは、オレ達もそろそろ行こうか」


 グリスの言葉に頷き、階段を上る。

 お父さんはこちらを見送ることもなく、寝転んだまま背中を向けていた。

 階段を上る足を止め、立ち止まる。

 そして顔だけお父さんのいる方へ振り返り、口を開いた。


 「__おやすみなさい、お父さん」


 お父さんは片手をひらひらと振り、答える。


 「おお。おやすみ、カナヤよ」


 それが、私とお父さんの最後の会話だった。