黒兎の相棒は総長でも止められない



その日も――もうすっかりお決まりになってきたこの光景。

校門を出ると、黒い車が静かに停まっていた。

凪くんの運転席。
いつもと同じように見えるのに
私の胸は…毎回やたらドキドキしてる。

 

(ほんと、もう慣れても良さそうなのに…)

 

ドアを開けて助手席に乗り込むと、凪くんがちらっとこっちを見た。

 

「乗ったか」

 

「……乗った」

 

シートベルトを締めると、車が静かに発進する。

車内は相変わらず静か。

でも、その静けさがなんだか居心地悪いような
逆に落ち着くような――よくわからない気持ちになる。

 

ふと、凪くんが口を開いた。

 

「……そういや」

 

「なに?」

 

「お前最近よく顔に出るようになってんな」

 

「……は?」

 

「前はもうちょい無愛想だったのにさ」

 

「別にそんなことないし」

 

凪くんが少しだけ横目で私を見て
口元をわずかに緩める。

 

「今日も学校で友達に何か言われたんだろ」

 

「……なんでわかるの?」

 

「顔が赤い。好きなやつでもできた?」

 

「違うし!!」

 

凪くんがふっと笑う。

 

「図星か?」

 

「は!?ちがうから!!!」

 

「ふーん?」

 

完全にからかう目。

もう耳まで熱くなるのが止まらなかった。

 

「ほんとそういうのやめて…!」

 

「お前さ、ほんと顔に出んだよな」

 

「うるさい!!」

 

凪くんはクスッと短く笑いながら、前を向いた。

それだけの会話なのに
心臓がずっとドクンドクン鳴りっぱなしだった。

 

(……やっぱりもう、ほんとに好きだわ私…)