響きあう恋のメロディー

前髪をあげ、額を見せた。

『この傷は、お兄ちゃんに突き飛ばされて、木から落ちた傷。』

お父さんが亡くなった後、お兄ちゃんに外に連れ出された。

仲直りしてくれるかな、そんな気持ちでお兄ちゃんについて行った。

着いた場所は、公園でお兄ちゃんは木に登った。

私も木に登ると、視界がぐらっとした。

どんどん、地面が近くなって体全体に衝撃がきた。

頭を打つことはなかったが、落ちていた木の枝に額をかすめ、傷ができた。

その傷は治ることなく、額に古い傷として残った。

私の心とともに。

話し終わると、みんな一言も話さなかった。

きっと、みんなも私のことが嫌いなるんだろうな。

そう思い、無意識に俯いた。

すると、柑橘系の優しい匂いが私の鼻をくすぐった。

反射的に顔を上げると、奏に抱きしめられていた。

『奏...』

「よく頑張ったな。」

その言葉を聞いて、涙がこみあげてきた。

「日向ちゃん、泣いてもいいんだよ。」

楽くんがそう言うと、目からポロっと何かがこぼれた。

それは、今までの苦しみや後悔を洗い流してくれる涙だった。

私はそのまま、奏の胸の中で嗚咽をこぼしながら、泣いた。


しばらくすると、涙はとまった。

泣いたせいか目の周りが熱い。