響きあう恋のメロディー

横断歩道をルンルンと歩いていると、後ろから突き飛ばされた。

そのすぐあとに、骨と硬いものがぶつかり合う鈍い音がした。

後ろを振り向くと、道路には真っ赤な液体の塊が広がっていて、車の下には男の人が一人下敷きになっていた。

私は、瞬時に理解した。

私が、車に轢かれそうになっていたのをお父さんが助けてくれたんだと。

その代わりに、お父さんは車に轢かれた。

私は、驚きと困惑で動けなかった。

お母さんとお兄ちゃんは、お父さんに駆け寄って救急車を呼んだりしていたのに、私は何もできなかった。

お兄ちゃんが近寄ってきた。

パンッという乾いた音が響いたと同時に右頬に痛みが走った。