君と紡いだ奇跡の半年





 表彰式を終えたあと——

 奇跡のような延長戦は、静かに少しずつ終わりに近づいていった。

 体調は日に日に落ちていったが、不思議と心は穏やかだった。

 もう十分すぎるほど、生き切ったと思えたからだ。

 それでも——

「なあ、湊。退院したら、もう一度だけ音楽室行こうぜ」

 真が冗談のように言った。

「うん、最後にまた3人で合わせたい」

 紗希も涙ぐみながら笑った。

 俺は、弱々しくも力を込めて頷いた。

「……行こう。必ず」

*

 そして奇跡は、最後の力をくれた——

 短時間ではあったが、医者の許可も出て、3人で音楽室に入ることができた。

 あの日々が甦る、懐かしい空間だった。

 俺は車椅子に座りながら、膝の上にそっとギターを抱えた。

 真はベースを持ち、紗希はキーボードの前に立つ。

「——最後のセッション、始めよう」

 俺の声に、二人は静かに頷いた。

 ギターのコードをゆっくり鳴らす。

 紗希の優しい旋律が重なり、真のベースが支える。

 まるで時間が止まったようだった。

『たとえ終わりが来ても——君と描いた景色は消えない』

 かすれる声で、精一杯歌った。

 涙が止まらなかった。

 紗希も真も、声を震わせながら必死に音を重ねてくれていた。

 最後のコードが静かにホールに響き渡り——

 しばらく誰も言葉を発さずに、ただ音の余韻に浸っていた。

「……ありがとう」

 俺は静かに呟いた。

「こっちこそ、ありがとうだよ」

 紗希が、そっと俺の手を握った。

「湊……俺たち、最高のバンドだったよな」

 真の声も震えていた。

「……ああ。世界一のバンドだった」

 胸の奥が、温かさと切なさでいっぱいだった。

(これ以上の幸せは、きっとない)

*

 それから——

 俺は静かに、穏やかに、少しずつ眠りにつく日々を迎えていった。

 紗希も真も、家族も——ずっとそばにいてくれた。

 夢のように眩しかったあの日々を思い出しながら——

 最後の瞬間まで、俺は音楽に包まれていた——

 微笑んだまま、ゆっくりと目を閉じた——

*

 空は、柔らかく晴れていた——。