まぶしいライトが照らすステージに立った瞬間、観客の熱気が一気に押し寄せてきた。
何千もの視線が、今この瞬間、俺たちに向けられている。
けれど——怖さはなかった。
今はただ、心が静かに燃えていた。
「——こんばんは! FIRE FLAMEです!」
俺が叫ぶと、客席から拍手と歓声が返ってきた。
「このステージに立てた奇跡に、感謝してます。最高の音楽を届けます!」
マイク越しに叫ぶと、さらに大きな拍手が起こった。
真がベースを構え、紗希がキーボードに指を置く。
「——いこう!」
俺のカウントに合わせて、イントロが鳴り響いた。
真のベースが地を震わせ、紗希の透明なキーボードが重なる。
ギターのコードが空間を満たし、音楽が広がっていく。
『限られた時間を 全部燃やして
君と描いた未来を ここに刻もう』
歌い出すと、客席から自然と手拍子が生まれていった。
何千人の前でも、俺たち3人の音はしっかり繋がっていた。
サビに向かうごとに、観客の一体感が高まっていくのが分かった。
『たとえ終わりが来ても
消えない想いがここにある——』
全身全霊で声を張り上げる。
真は力強くリズムを刻み、紗希のハーモニーが夜空に溶けていった。
曲のラスト——
静かにコードが鳴り終わり、最後の余韻がホール中に響き渡る。
次の瞬間——
観客席が割れるような大歓声と拍手に包まれた。
涙が自然と溢れてきた。
「——ありがとう!」
声が震えていた。
それでも——心からの感謝だった。
俺たちは3人で手を繋いで、深く一礼した。
*
舞台袖に戻ると、3人とも声を出さずに顔を見合わせた。
泣き笑いしながら、俺たちは強く抱き合った。
「……湊、最高だったよ……」
紗希が涙をこぼしながら笑う。
「マジで伝説作ったな!」
真も目を真っ赤にしながら叫んだ。
「……ありがとう。ここまで来れたのは、お前らのおかげだ」
声が震えていた。
でも、その震えさえも全部、今の俺だった。
(——生きてて、よかった)
心の奥底から、そう思えた——。



