幼馴染×存在証明

アスカには3歳上の、ジュリという兄がいて。


その年の初夏、持病を拗らせて入院したという彼の元へ、2人で見舞いに行った。


ジュリは、アスカが受験する予定の、名門・帝峰高校の3年生で、生徒会長をしている優秀な人材だ。


私は、長年同じ家にいたにも関わらず、多忙なジュリとはそれほど面識がなかったため、少し緊張していた。


「あぁ…アスカ。涼香もいらっしゃい」


穏やかな声が病室内に響く。


アスカより長い、鎖骨に届くくらいのプラチナブロンドの髪をサイドに束ね、澄んだ緑色の目を柔和に細めた。


点滴に繋がれているが、顔色は良く、ベットからは起き上がっていた。


久々に会う兄弟同士、ゆっくり世間話…なんてことはなく、2人は気付いた時には家についての難しい話をしていて。


兄弟仲は悪くないはずだが、昔はもっとアスカがお兄ちゃん子だった。


私の前では悪魔のようなアスカが、ジュリに対しては毒牙が抜けたように年相応に振る舞うので、初めて見た時は度肝を抜いたものだ。


しかし、いつの間に兄離れしたのか、今ではむしろそっけないくらいで。


しばらく2人の声を聞きながら外を眺めていたが、扉を開く音でアスカが部屋を出ていったことに気づく。


「電話だって」


ジュリにそう声をかけられる。


「…体調はどうですか、疲れてないですか?」


「ふふ、全然。久々に2人と話せて楽しいよ。

…それに、アスカが大変なのは俺の所為でもあるから、こうして頼ってくれるのは、嬉しくて」


ジュリは伸びをしながら、アスカが出ていった扉の方を見た。


アスカには総帥から、主席入学というノルマが課せられていて。


その上、社交面においてジュリの欠席をカバーしなくてはならず、勉強する時間を捻出するのも一苦労だった。