幼馴染×存在証明

「皆様、今宵は楽しんで頂けましたでしょうか。

僭越ながら、この会の責任者を務める、私──中央委員の三嶋アスカから、最後に挨拶をさせていただきます。」


パーティも終盤に近づく頃、会場の音楽が止み、聴き慣れた声がフロアに響いた。


日凪先輩と踊っていた私は、先輩の手を離し、声の主を確認する。


今日初めて見た彼は──私のドレスとよく似た雰囲気のタキシードに、プラチナブロンドの髪をサイドへとかきあげ。宝石のような空色の瞳を余すことなく存分に見せつけている。


耳元にはシルバーのピアスを付けていて。何というか、離れていた間に、私の知らない男の人になってしまったような、そんな気がした。


ただ、彼がスピーチを始めてすぐに、私は青ざめることになる。


「アスカ…顔、」


──笑いすぎだ。


もちろん、他の生徒たちには微笑んでいるくらいにしか見えないのだろうが。普段から表情筋の乏しいアスカがあそこまで笑顔を作る時は大抵…


「彼、疲れてるね」


日凪先輩の声に驚いて思わず振り返る。


「分かるんですか?」


うん、何となく、とアスカを眺める先輩に続いて、私も再び彼へと視線を戻した。


呼吸や視線に一切の乱れはなく、流暢に続く祝辞。不自然なところなど何一つない筈なのに、それがどこか不気味さを加速させる。


「なんか、今日の三嶋先輩…」


「うん、色気ヤバいよね」


「笑ってるとこ、初めて見たかも…」


水を打ったように静かだった会場が、少しずつざわめき始める。頬を染めてアスカに熱い視線を送る生徒がいる中で、私は背筋を凍らせていた。


彼が壇上から降りたのを確認し、日凪先輩に向き直る。


「先輩、私…」


「うん、行ってきてもいいよ」


言おうとしていたことを先に言われて、思わず目を見開く。


「涼が三嶋アスカといるとこ、前に別のパーティで見たことある。

人違いだと思ってたけど……確信した」


彼は寂しさを滲ませた表情で、私のドレスの装飾を一つ撫でた。


「でも、約束。また俺と遊んで」


艶やかな唇が、言葉を紡ぐ。黒曜石のような瞳を薄く細めて、遠慮がちに私の頬に手を添えた。


「当たり前です。勝負でも何でも、いつでも受けて立ちますよ」


笑顔でそう答えると、日凪先輩は私の手を取り、甲に軽くキスをした。


周囲がどよめいたのを感じ、私は慌てて手を引っ込め、その場を後にする。


日凪先輩、今日は顔を隠してないこと、忘れてないだろうか。彼の素顔は、そこにあるだけでも破壊力があると言うのに。