幼馴染×存在証明

「あ、あのっ…み、三嶋委員長、5分前、ですっ…」


俺の様子を伺い、委員の生徒が、震えながらマイクを差し出した。


気持ちを切り替え、安心させるように、少しだけ目の端を緩めて受け取る。


すると生徒は、ほっとしたように安堵の表情を浮かべ、自分の持ち場へと戻っていった。


辺りを見渡し、舞台袖から見える会場の様子に目が留まる。


ダンス用の音楽が流れる時間も残り少ない。会場は生徒の殆どがダンスフロアにいるのでは、というほどの最高潮の賑わいぶりを見せていた。


水面下でトラブルはあったが、表向きは成功したと言えるのだろう。


締めの挨拶をすれば、この慌ただしさからも暫く解放される。


舞台脇の生徒に合図され、壇上に上がる。


フロアの音楽が止み、何百もの視線がこちらに集中した。


「皆様、今宵は楽しんで頂けましたでしょうか。

僭越ながら、この会の責任者を務める、私──中央委員の三嶋アスカから、最後に挨拶をさせていただきます。」


会場に割れんばかりに響き渡る拍手。


それを静止するよう軽く手を挙げ、一拍置く。


俺は用意していた言葉を淡々と述べていった。


面白くもないただの挨拶に、会場は水を打ったように静かで。一言一句聞き逃すまいとする眼差しが、今は重く感じた。


最後に、来賓や設営に携わった人々への感謝、そして帝峰の一年間が始まることを祝福し、一礼する。


「三嶋委員長、素敵でした…!」


裏方に戻ると、興奮した様子で委員の生徒たちが駆け寄ってきた。それを一瞥して、マイクを手渡す。


首元のネクタイを緩めると、今日1日の疲れがどっと押し寄せてくるようだった。


この後は時間的余裕もある、だから生徒会の控え室に行ってやっても良い──が、その前に佐倉颯とだけは一度話しておかなくてはならない。


このまま野放しにして帰すつもりはない。


それから涼香の様子も確認しなくては。


ある程度、体調に問題が無さそうな事は報告を受けている。会場内カメラと繋いでいるモニターでも、その様子は確認した。


だが、実際に彼女を一目見ないことには、どうにも腹の虫が収まりそうになく。


手渡されたペットボトルの水を飲み、一息つく。


暫くすると、会場と裏方とを繋ぐ通路のあたりが騒がしいことに気づいた。目を向けると、そこには案の定、佐倉颯が数人の生徒たちに囲まれていて。


ただその傍に、よく知る顔を確認して、手に持っていたペットボトルを強く握った。


「涼香」


俺の声に、気付いた彼女が、赤らんだ顔をあげてこちらを見た。