幼馴染×存在証明

会場に戻ってきた三嶋アスカは、パーティの進行状況について、委員会の生徒に確認する。


「本日のメインである、パートナーとのダンス交流は、あと15分ほどで終わりです。

委員長の挨拶のあと、閉場の21時までは自由時間の予定です。

ご存知だとは思いますが、各自食事や学年間での交流を深めていただく時間となっています。」


軽食はどうされますか?と問われ、必要ないと伝える。


会場裏では、相次ぐ機材トラブルや、パーティの進行管理への対応に、委員たちが忙しなく動いていた。


彼らも、食事を取っているようには見えない。


「…佐倉颯は?」


その場にいるはずの男の姿が見当たらず、続いて委員に問う。


「あ、彼なら先ほど広間の方に行かれました。交代で軽食を取ろうと仰って。何人かの委員と共に」


相変わらず勝手に行動する点は腹立たしいが、正直今の状況で自分に委員たちを気遣える余裕はあまりなく。


その立ち回りは有り難くもあった。


俺は自嘲気味に笑う。


あろうことか彼に感謝をするとは。


会場に酒を紛れ込ませ、俺を含め複数の人間を混乱に陥れている彼──佐倉颯に。


別に証拠があるわけでも、目的が分かっている訳でもない。


ただ、長年培ってきた勘と、強いて言うなら、彼以外に俺の目を盗んでここまでのことができる人物がいないから。


料理の提供タイミングの変更、会場内に持ち込まれた酒、照明や機材のトラブル。


委員会の内情を知る人間の犯行なのは明らかだった。


思えば、仮面舞踏会を模したイベントを提案したときから、仕掛けられていたのかもしれない。


ただ、それらがほぼ同時に起こったことで、状況把握まで時間がかかったことと、矛盾の多い行動に目的も読めず。


生徒会の2人が結論を出せずにいるように、未だ俺も核心に触れられないでいた。


『溜め込みすぎて、爆発するなよ』


頭の中で若宮椿の声が響く。


五月蝿いな、分かってる。


数年前の俺であれば、とっくに佐倉颯を学校から追放しているし、正直今だってそうしたいのは山々だ。


ただ、彼も"準備"してきている。


ここ数日、彼を観察していて分かったこと……おそらく、佐倉颯には助力者がいる。


俺の監視下にある"帝峰"に来れた時点で、予感はしていたが、彼には俺の目を掻い潜る術がある。


今度こそ俺に潰されないように。次こそは涼香の側から離れないー…、引き離されるわけにはいかない、と言わんばかりに。


本当に、腹立たしい。


気付けば握っていた手のひらには血が滲むほど力が入っていた。