幼馴染×存在証明

アスカに控え室に来るよう連絡した後、しばらくすると本人から電話がかかってきた。


どうやら照明器具のトラブルだなんだと、裏方の方で忙しくしていたらしく、少しばかり遅れるとのことだった。


その時俺は、直感的に、アスカは犯人じゃないと思った。


彼にとってこの件は全てにおいてマイナスでしかないし、何より彼が花咲涼香に進んで酒を飲ませるとは思えない。


こうやって妙にタイミングが悪いのも、第三者が彼の邪魔をしているとしか思えなかった。


だからその時、会場内に酒があったことや、花咲涼香が酒を飲まされたことは伝えていた。


彼は冷静に話を聞いてるように感じたが、普段の彼より数段声が低かったのは、電話越しであることだけが理由ではないだろう。


現に、目の前のソファに座る彼からは、犯人を気の毒に思ってしまうほど、物騒な気配を感じる。


「…アスカ、お前、心当たりあるな?」


ふと、俺とアスカの会話を横で聞いていた椿が、口を挟んできた。


すると彼は意外にも分かりやすく眉を上げた。


「だったら早めに言ったほうがいいぞ、自分のためにもな」


椿が体を起こし、足を組みながら言う。


彼は数秒押し黙り、とても不本意そうに眉間に皺を寄せ、口を開いた。


「…証拠も目的も不明瞭です。ただ、一連のことが可能なのは、俺の知る限り1人だけです」


「ほう?」


そう言ってまた黙る。


どうやらその1人のことを、言うつもりはないらしい。