幼馴染×存在証明

「あれ、涼香?何してるの?」


聞き慣れた声が耳を掠め、緊張していた私の肩はビクッと縦に震えた。


後ろを振り返ると、案の定、水色のドレスを着た女生徒が、両手いっぱいに食べ物を持ち、立っている。


顔を見ずとも分かる、遥だ。


「えぇっと…」


適当に言い訳しようと思ったところで、彼女の左手に目が止まる。


そこには、片付けたはずのシャンパングラス。


「遥、それ…」


「あぁこれ?まだ誰も飲んでないみたいでさ〜、さっき取ったのよ!」


そう言って左手を持ち上げ、ゆらゆらとグラスの中の液体を揺らした。


考える前に先に体が動き、ツカツカと近づいてハルカの手を取る。


「え、涼香、もしかして喉乾いてたの?案内しようか…って、え!?」


そして、グイ、と。


遥の手に持っていたグラスを奪い取り、中のものを口に流し込んだ。


喉が熱い。


「ちょっと、そんなに飲みたかったの⁉︎も〜仕方ないんだから、……あれ?

確か、あの辺に沢山あったはずなんだけど、どこだろ」


そう言ってキョロキョロと会場を見渡す遥。


お酒を一気に飲んだせいか、フラリとよろめいた私を、背後から、一緒にいた男が支えた。


寄りかかる形で、背中が彼と密着している。


その様子に気づいた遥が振り向く。


「涼香⁉︎た、体調悪いの…⁉︎」


「あ、ううん、ちょっとつまづいただけ、ヒールだし」


後ろの彼に軽くお礼を言って、すぐに向き直り、何でもないように手を挙げた。


「そっか…良かった!じゃああたし、飲み物もらえないか聞いてくる!また後でね〜」


ひらひらと手を振り、遥が去る。


私はほっと一息、胸を撫で下ろした。


「大丈夫?」


後ろから男が耳打ちしてくる。


「ふふ、あなたも、同じか、それ以上に飲んでいるじゃないですか。」


私はそう言って振り返り、仮面越しに笑った。


会って間もない相手だが、窮地を共にして、自分の中で仲間意識が芽生えたようだ。


お酒が入ってるからか、口角が普段より緩んでいるのかもしれない。


男は口元に手を当て咳払いをした。


「じゃあ、このまま外に出そう。もう少しだけ手伝ってくれる?」


始めたのは私なのに、優しい人だな。


「こちらこそ、ありがとうございます。」


そう言って、司会のアナウンスを背に私たちはテーブルを会場の外へと出した。