幼馴染×存在証明

「俺の予想が当たってるなら…、君は俺を頼った方がいい」


男は私にしか聞こえないくらいの小さな声で呟いた。


敬語が取れるくらいには、男も緊迫しているらしい。


「予想って、なんです?」


だが、油断はできない。


この男が本当に私と同じことを考えているかなんて、私が正直に話すこと以外、確かめようがない。


だが私にこの状況を伝えるつもりは全くなかった。


すると。


「…‼︎っちょと!」


グイッと、私が持っていたグラスに残っていたソレを、男は一気に飲み干した。


「これなら、当面は仲間じゃないかな。」


「なにして…‼︎」


驚く私の口に、男は、シッと、人差し指を当てる。


腰に手を当てられ、グッと距離を詰められる。


「シーッ、落ち着いて。大丈夫、まだ誰もグラスは持って行ってない。

君はどうしてこれを持ってたの?」


「会場に入ってすぐ、あのテーブル近くを通った時に、ウェイターに渡されました。」


ヒソヒソと、お互い抱き合って見えるような距離で話す。


会場には男女のペアが多いので、不自然には見えないらしい。


「なるほど、ね…。確かなことは言えないけど、怪しいね、その男。顔は覚えてない?」


そう言われて、確かにと、記憶を辿る。


しかし頑張ってみるも、顔は思い出せない。


フルフルと首を横に振る。


「…覚えてません。悔しいですが、今はとりあえず」


チラッとグラスが置いてあるテーブルを見る。


男も私の言いたいことが分かったのか軽く頷いた。


「うん、まずはあのテーブルを何とかしなくちゃね」