幼馴染×存在証明

会場に音楽が流れる。


基本のステップはマナー実習の授業で教わったからか、生徒たちはスムーズにペアを組んで踊り始めている。


フロアの隅で、ウェイターに貰ったグラスを片手に、私は生徒たちを観察していた。


中央委員の2人はこの中にいるのだろうか。


仮面で分かるのは学年くらいで、装飾が青いのが1年生、赤色は2年生、そして緑色の装飾は3年生だ。


とはいえアスカなら、仮面をつけていても髪色で分かりそうだが、目を凝らしてみてもそれらしい人はいない。


「退屈ですか?お嬢さん」


ふと横から声をかけられる。


隣を見ると、緑の装飾の仮面をつけた背の高い男がこちらを見ていた。


3年生だ。


白を基調としたタキシードに、ミルクティー色の髪は男性にしては長く、サイドにまとめている。


少しジュリっぽさも感じるその男に、幾分か警戒心も薄らいでしまう。


「いえ、楽しませていただいてます」


「それは何より」


ゆるく口角を上げた男は、ゆったりとフロアの方を向いて私の隣に立つ。


まだ何か用だろうか。


「貴方にはどんな風に見えますか」


「…?」


男の問いの意味がわからず、首を傾ける。


「いえ、難しい話ではなく。率直に、感想が聞きたいのです、このパーティの」


そんなことを聞くなんて、中央委員とか、設営関係者だろうか。


私は再び会場を見渡した。


「そうですね…プランから会場設備に至るまで、細かいところまで来場者への気配りが感じられると思います。

新入生を祝うには充分過ぎるくらいに、素敵な会では」


チラリと、隣の男を盗み見る。


仮面で表情は分からないが、醸し出す雰囲気で、何となく求めている回答ではないのだろうと察する。


どうせ暇だし、暫く話し相手になってみようか。


「まぁ…、実を言うと、少し違和感は抱いています」


ピクリと、男が反応する。


「例えば、あそこ」