幼馴染×存在証明

どうして彼はこうなったのだろう。


いや、もともと素質はあったじゃないか。


アスカの癇癪を目の当たりにし、自問自答を繰り返すたび、私はいつも思うことがあった。


私と会う前は、どんな人だったのだろう、と。


記憶の限りでは、彼は、親族以外の家人に興味はないし、親族に対しては礼節を持って接している。


つまり、私にだけ強く当たっているのだ。


もし、私の…、『居候』の存在自体が、彼の何かしらのコンプレックスに障っていたのだとしたら。


アスカのこの暴力性を引き出したのは、自分なのかもしれないと。


「ごめんなさい、もうしません、やめてくださ…」


「喋るなって、言ったよね」


この状況を作ったのは自分なのではないかと、そう思った。


であれば、矛先を向けられるべきは自分…そこまで考えたとき、私はそれ以降の思考を放棄した。


今のアスカの癇癪を1人で受け止める気概も自信もなく。


むしろ、手を出されないでいる状況に安堵さえしていた。


それくらい私は弱かったし、醜かった。


逆らえば、いじめられるのは今度こそ自分であることも理解していた。


事が終わって、アスカがその場を離れれば、怯え続ける子に土下座した。


「ごめんなさい…私が…弱くて…醜くて、逃げて、ごめんなさい…」


震える声で、ただただ、これからあなたが理不尽に生活を脅かされることなく、過ごしていけることを願っていると、そう伝えた。


しかしそんな気休めが長く続くわけもなく、そして自分を責めずにいられるほど鈍いわけでもなく、私はたびたびアスカのいないところで泣いた。


自分が泣いてはいけない立場であることも理解していたが、10にも満たない子供に受け止められる罪悪感ではなかったのか、反射的に涙が出た。


どこから聞きつけたのか、アスカの父親である財閥の総帥が、私を慰めに来ることがあった。


しかし、泣きじゃくる私を前に、最後には必ず


「アスカの良き友でいてくれ」


とお願いをしてくる。